著作権侵害になるのかどうなのか

著作権侵害問題に関しては非常に判断が難しい問題です。

類似点がどのくらいあるのかというのを客観的に判断する必要があるようです。

記憶に新しい事件としては東京オリンピックのエンブレム問題がありましたね。

デザイナーの佐野研二郎さんが作成したエンブレムがベルギーの劇場のロゴに似ているということで、大騒動になり、最終的にエンブレムを作り直すことになりました。

あのときも、あれはパクリだ、パクリじゃないと法律に詳しい人の間でも意見の異なる問題となったと思います。

類似性をどこまで認めるのかという問題において著作権侵害というものを認定することはなかなか難しいところがあるというのがよくわかった事件だったと思います。

つまり客観的に類似しているというものがあったとして、どこからがパクリでどこからがパクリじゃないのか線を引くのが難しいわけです。

当然偶然の一致ということもあるわけです。

そういう意味で著作権侵害での類似性を議論する場合には、まずその作品を知っていたかどうかという点もポイントの一つとなるようです。

と考えると、今回の「カメラを止めるな」に関して言うと、舞台から着想を得ていると認めているため、これについてはもう偶然一致しましたとかいうレベルではなく、あとはどこまで類似してますかという問題になるようです。

ではどのレベルまでが問題になるのかということですが、これは過去の判例を参考にすることになります。
著作権侵害問題では必ずと言っていいほどに出てくるのが「江差追分事件」(平成13年6月28日 最高裁判決)での判断です。
この判例では以下の点をあげています。

・既存の著作物に依拠しているかどうか

・その表現上の本質的な特徴の同一性が維持されており、それを直接感じ取ることができるのかどうか

この判断に基づいて、問題点を整理していくことになるのですが、これ見ておわかりの通り、客観的な判断が難しいんですよね。

表現上の本質的な特徴って何?

直接感じ取ることができるかどうかって人それぞれ違うんじゃないの?

という問題がどうしてもついて回るんです。

では、今回の「カメラを止めるな」問題では、どうなのでしょう?
本質的な特徴って何か?
それが同一なのか?
そしてそれを直接感じ取ることができるのかどうか?

これまた判断が難しい話なのです。

で、す、が。。。

一般的なショービジネスの商習慣としては、すでに着想を得ていると認めているということであれば、そこにはやはり原案、原作ということでの権利を認めていくべきです。

ショービジネスの世界はある意味、権利を積極的に認めることで成り立っている世界です。
相手の権利を認めるということは、自分の権利を認めてもらうことにほかならないからです。

自分は相手の権利を認めない、でも自分の権利は認めてほしいというのはなかなか筋が通らない話しですよね。
そうでないと盗作や著作権侵害という問題が頻繁に発生することになってしまいます。

これが全く知らない状態で製作したら偶然似ているところがあったということであれば、議論の余地があるのですが、今回の映画に関しては
・舞台をみた
・舞台をみて映画化したい!と考えた
・そして別のストーリーにした
という経緯があり、それを監督自身も認めているわけです。

本人や製作会社からしたらオリジナル作品かもしれませんが、結局のところ、他人がどう評価するかという点においては、これはある程度の原案、原作としての権利を認めるべき事案ではないかと。

監督自身もコメントしているように、これはオリジナル作品だと突っぱねるのではなく、劇団の方の主張にもしっかり耳を傾け、お互い円満な解決がおこなえるように皆で知恵を出し合ってほしいところですよね。

製作側との交渉の舞台裏

FLASHの続報で劇団PEACE主宰者の和田亮一さんが製作側との交渉の様子を伝えています。

現在、『カメラを止めるな!』のエンドロールには「原案」のクレジットが載っているが、その背景にあった上田慎一郎監督(34)ら制作側とのやりとりを和田氏が明かす。
出典:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180822-00010001-flash-peo

この記事によると、映画のクレジット表記に「原案」として書かれることにいたった経緯が書かれています。

・映画にははじめ何も表記がなかった

・上田慎一郎監督がコメントである劇団の劇をみて着想を得たと語っていた

・上田慎一郎監督に連絡して劇団名や作品名を原作表示してほしいと依頼

・プロデューサーを含め議論

・原案としての記述を約束

・原案利用契約書が不当な内容だったため弁護士と相談中

こうやって読むと、原案、原作という言葉の違いはあれ、ある程度の権利を認めてそれに対して対価を払うという姿勢を製作側も見せているようですが、その内容に関して揉めているということのようですね。

上田慎一郎監督は今回の「カメラを止めるな」のヒットに関しては、監督としては作品がヒットしてもギャラはすでにもらっているため、懐に入るお金が増えるということはないとコメントされていました。

そのため契約で揉めているというのは、上田慎一郎監督の問題ではなく、製作会社の問題が大きそうですね。

原作、原案として納得できる権利とその対価を払おうとしない態度に和田亮一さんは憤慨している様子が見て取れます。

最後に

今回の騒動では、製作会社のコメントを読むと、すでに劇団側と問題に関して調整をおこなっているところで報道があったと書かれています。

ただFLASHの続報を読んでみると、どうも様子が異なるようにも思えます。

製作会社の言い分ではせっかく円満解決を図ろうとしているところに、さも問題があり、もめているような記事で煽られた!!と怒り心頭なご様子なようですが、実際のところはどうなのでしょうか?
FLASHの記事では原作者の和田さんもかなり憤りを感じているような書き方でしたが、円満な解決に向かってちゃんとステップが踏めているのかそこが少し気になります。

また製作側からの反論ということなのですが、揉めれば揉めるほどワイドショーなどでも取り上げられるので、ある意味炎上商法に乗っかってみたという感じなのかもしれないですよね。

原案とされる演劇の内容などはこちらの記事でまとめています。
「カメラを止めるな」盗作疑惑の真相は?原作者・脚本家との許諾問題が勃発。

 

最後までご覧いただき本当にありがとうございました。

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